顧客分布の可視化

本演習にかかる時間はおよそ 30 分です。

これまでの演習で、顧客分布商圏を作成したり、市場シェアを算出したりする方法を習得しました。

本演習では、店舗と顧客の位置関係をライン データで表現します。また、店舗別の顧客ポイント データを使用して町丁・字等ポリゴンに顧客数や売上情報を集計し、それらの数値情報をもとに、町丁・字等ポリゴンを様々な表現で可視化します。

なお、集計に使用する町丁・字等ポリゴンは、顧客が分布している町丁・字等の一覧を使用して作成します。

演習

事前準備が完了していない場合は、演習に入る前にこちらの操作を行ってください。

店舗および顧客のポイント データの確認

  1. 「BAProチュートリアル_顧客分析.aprx」の [演習2] マップを開きます。
  2. [コンテンツ] ウィンドウおよびマップ上に店舗および顧客のポイント データがあらかじめ追加されていることを確認します。

店舗と顧客の関連をラインで可視化

まず、各店舗の顧客と店舗を結ぶライン データを作成し、顧客の分布状況を可視化します。また、店舗と各顧客間の自動車での移動時間を計測します。

  1. [解析] タブ → [ジオプロセシング] グループの [ツール] をクリックし、[ジオプロセシング] ウィンドウの検索ボックスに「スパイダー」と入力します。
  2. 検索結果の中の「 スパイダー ダイアグラムの生成 (Generate Desire Lines)」ツールをクリックして開きます。
  3. [スパイダー ダイアグラムの生成] ツールが開いたら、以下のように設定し、[実行] をクリックします。
    • 店舗レイヤー: 自社店舗
    • 顧客レイヤー: 自社顧客
    • 出力フィーチャクラス: 各店舗の顧客分布ライン
    • 店舗 ID フィールド: 店舗ID
    • 関連付けられた店舗 ID フィールド: 店舗ID
    • 距離タイプ: 運転時間 (平常時)
    • 計測単位: 分

マップ上に、店舗とそれに紐づく顧客を結ぶラインが追加されます。結果の詳細を確認します。

  1. [コンテンツ] ウィンドウ上の「各店舗の顧客分布ライン」を右クリック → [属性テーブル] をクリックして、属性テーブルを開きます。

「運転時間 (平常時)」フィールドに、各顧客の位置から店舗までの自動車での移動時間が格納されます。

[スパイダー ダイアグラムの生成] ツールでは、店舗と顧客を紐づけるライン データを作成できるほか、店舗-顧客間の距離を計測することもできます。
この時出力されるライン データの形状は直線ですが、距離の計測方法は、直線に加えて道路ネットワークを利用できます。たとえば、自動車や徒歩での移動時間を計測することができます。

顧客が分布する町丁・字等の一覧の確認

顧客が分布する町丁・字等の一覧が記載されたテーブルをマップに追加します。

  1. [マップ] タブ → [レイヤー] グループの [データの追加] → [データ] をクリックして、[データの追加] ダイアログを開きます。
  2. 以下の Excel シートを選択し、[OK] をクリックします。

    <事前準備で演習用データを配置した場所>\bapro_tutorial_customer_analysis\演習用データ\顧客が分布する町丁字等リスト.xlsx\町丁字等リスト$

  3. [コンテンツ] ウィンドウに「町丁字等リスト$」が追加されます。「町丁字等リスト$」を右クリック → [開く] をクリックし、属性テーブルを開きます。
  4. テーブルに町丁・字等の ID (リンクコード) や名前の情報が格納されていることを確認し、テーブルを閉じます。

区画情報を持つテーブル データから町丁・字等ポリゴンを作成

先ほど追加したテーブルを使用して、町丁・字等ポリゴンを作成します。

  1. [解析] タブ → [ジオプロセシング] グループの [ツール] をクリックし、[ジオプロセシング] ウィンドウの検索ボックスに「標準区画商圏」と入力します。
  2. 検索結果の中の [ 標準区画商圏の生成 (Generate Standard Geography Trade Areas)] ツールをクリックして開きます。
  3. 以下のように設定し、[実行] をクリックしてツールを実行します。
    • 区画レベル: 町丁・字等 (JP.Blocks)
    • 出力フィーチャクラス: 顧客が分布する町丁字等ポリゴン
    • 入力タイプ: テーブル
    • 区画 ID テーブル: 町丁字等リスト$
    • 区画キー フィールド: リンクコード

[入力タイプ] パラメーターを「テーブル」に設定した場合、[区画キー フィールド] パラメーターの値はテキスト フィールドである必要があります。

マップに、顧客が分布する町丁・字等ポリゴンが追加されます。

[標準区画商圏の生成] ツールでは、上記のように区画 ID を含むテーブルを元に商圏を作成できるほか、BA データセットが提供する区画リストの中から、任意の区画を選択して商圏を作成することもできます。
その場合は、[入力タイプ] パラメーターを「リスト」に設定し、[区画 ID リスト] パラメーターの [参照] ボタンから [区画の選択] ダイアログを開き、追加したい区画を選択します。

町丁・字等別に顧客ポイントを集計

次に、町丁・字等ポリゴンに対して、店舗別の顧客ポイントを集計します。

  1. [ジオプロセシング] ウィンドウの [戻る] ボタンをクリックし、検索ボックスに「エリア内での集計」と入力します。
  2. 検索結果の中の [ エリア内での集計 (Summarize Within) (解析ツール)] ツールをクリックして開きます。
  3. ツールが開いたら、以下のように設定して [実行] をクリックします。
    • 入力ポリゴン: 自社店舗周辺の町丁字等ポリゴン
    • 入力集計フィーチャ: 自社顧客
    • 出力フィーチャクラス: 町丁字等別の顧客数
    • 集計フィールド: [フィールド] で「売上高」と「売上数」の 2 つを選択し、両方の [統計情報] を「合計」に設定

マップに、結果のポリゴンが追加されます。結果を確認します。

  1. [コンテンツ] ウィンドウ上の「町丁字等別の顧客数」を右クリック → [属性テーブル] をクリックして、属性テーブルを開きます。

属性テーブルを右にスクロールし、町丁・字等ポリゴンに重なる顧客ポイントの数と、売上高や売上数の数値情報が集計されていることを確認し、テーブルを閉じます。

町丁・字等別の顧客を様々な方法で可視化

次に、町丁・字等ポリゴンのシンボル設定を変更し、色々な方法で可視化します。

シンボル設定の詳細は、 Esri ヘルプ ドキュメントをご覧ください。

  1. [コンテンツ] ウィンドウの「町丁字等別の顧客数」以外のレイヤーのチェックボックスをオフにして、非表示状態にします。
  2. [コンテンツ] ウィンドウの「町丁字等別の顧客数」を右クリック → [シンボル] をクリックして、[シンボル] ウィンドウを開きます。

等級色

まずは、町丁・字等別の売上高をもとに、シンボルを色分けします。

  1. [プライマリ シンボル] を「単一シンボル」から「等級色」に変更します。
  2. [フィールド] に「Sum user_売上高」を設定します。
  3. [クラス] を「4」に設定します。

町丁・字等ポリゴンが、売上高の数値に応じて 4 つの色に色分けされました。

等級色を使用すると、シンボルの色を変化させることで、マッピングされたフィーチャ間の定量的な差異を表すことができます。

次に、顧客 1 人当たりの売上高をもとに色分けします。

  1. [シンボル] ウィンドウの [正規化] で「Count of Points」を選択します。

[正規化] パラメーターを設定することで、データ値を除算して比率を作成したり、上記のように単位当たりのデータ値を算出して、レイヤーのシンボルを表現できます。

町丁・字等ポリゴンを、顧客 1 人当たりの売上高の数値に応じて色分けさせることができました。なお、この時、顧客数が 0 のエリアは自動的にポリゴンが非表示になります。

等級シンボル

次に、町丁・字等ポリゴンを、売上数の大きさに応じてポイント シンボルで表現します。

  1. [プライマリ シンボル] を「等級シンボル」に変更します。
  2. [フィールド] に「Sum user_売上数」を設定します。
  3. [最小サイズ] を「3」、[最大サイズ] を「15」に設定します。

売上数の大きさに応じたポイント シンボルがマップに表示されます。しかし、今の設定では売上数が 0 のエリアにもポイントが表示されます。そのため、売上数が 0 のエリアを除外して、シンボルを非表示にします。

  1. [高度なオプション] タブを開き、[データの除外] を展開したら、[新しい式] をクリックします。
  2. 式を以下のように設定し、[適用] をクリックします。

売上数が 0 のエリアに対して「除外」というシンボルが新しく適用されます。売上数が 1 以上のエリアを目立たせるために、「除外」シンボルの色を無くします。

  1. [プライマリ シンボル] タブに戻り、[クラス] タブの「除外」シンボル上で右クリックし、「色なし」を選択します。

売上数が 1 以上のエリアのみに対して、売上数の大きさに応じた大きさのポイントを表示させることができました。

等級シンボルを使用すると、シンボルのサイズを変化させることで、マッピングされたフィーチャ間の定量的な差異を表すことができます。

ドット密度

最後に、町丁・字等ポリゴンの持つ顧客数のフィールド値をもとに、ドット密度シンボルで可視化します。

ドット密度は、マップ上のポリゴンの属性の量を表す 1 つの方法です。フィールドの定量的な値を、ポイント シンボルの集合として各ポリゴンにランダムな位置に表示します。
自然なデータ分布を模倣するには、町丁・字等などの細かいポリゴン データを使用し、透明なポリゴン シンボルとともに、ドット密度シンボルで表示することを試すことをお勧めします。

  1. [プライマリ シンボル] を「ドット密度」に変更します。
  2. [フィールド] に「Count of Points」を設定します。
  3. [ドット サイズ] を「4 pt」、[ドット値] を「2」に設定します。

[ドット サイズ] は 1 つのドットの大きさを意味し、[ドット値] は 1 つのドットが表すフィーチャ数を意味します。 たとえば、今回のようにドット値を「2」に設定すると、1 ドットにつき 2 人の顧客が存在することを表現できます。

町丁・字等ポリゴンの持つ顧客数の数値フィールドを、ドット密度で表現することができました。

[ドット値を自動調整して密度を維持] オプションを有効にすると、マップの拡大・縮小に伴って、ドット値を動的に変化させることができます。これにより、マップの縮尺に関係なくドットの配置を視覚的に均一に保つことができます。 [ドット値] で設定した値は、[縮尺] で設定した縮尺で適用されます。

  1. [プロジェクト] タブ → [保存] を選択し、プロジェクトを保存します。

まとめ

この演習では、店舗と顧客を紐づけるラインを作成し、各顧客とそれに紐づく店舗間の移動時間を算出することができました。

さらに、顧客が分布する町丁・字等の一覧が記載されたテーブル データから町丁・字等ポリゴンを作成し、そのポリゴンに顧客ポイント データを集計しました。 そして、顧客情報が付与された町丁・字等ポリゴンを、様々な表現で可視化しました。

また、以下のツールの操作を学びました。

  • [スパイダー ダイアグラムの生成] ツール
  • [標準区画商圏の生成] ツール
  • [エリア内での集計] ツール